2014年度・地域実践演習Ⅱでは、大阪(住之江区・住吉区・西成区)での防災課題を把握し、防災対策の基礎を実践を通じて学びました。住之江区・住吉区・西成区の3区は、直下型地震、津波、地盤沈下、川の氾濫、密集市街地での火災など、多様な複合災害リスクを抱えています。3区での課題を解決できれば、日本やアジアの同じような都市での防災にもアプローチできます。

一方、災害からいのちを守るには、単に建物やインフラを頑強にするだけではありません。その地域に住む「人」の「いのちを守る力」を養い、想定外の複合災害にも、しなやかに対抗し、被害を受けても、速やかに回復する「都市」を作る必要があります。このような地域の持つ力は、レジリエンス(強靭性)などと最近は呼ばれています。本演習では、都市に暮らす住民の一員として、学生自らが、都市のレジリエンス(強靭性)を向上させるための、様々なプログラムに取り組みました。

授業の経過と成果

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4月12日 キックオフフォーラム「コミュニティレジリエンスを高める」【チラシ】

大阪市立阿倍野防災センターを会場にコミュニティ防災教室のキックオフフォーラムが開催されました。住之江区・高橋英樹区長から「行政による地域防災力強靱化の実践」として、行政と地域とが協働して防災に取り組んでいる状況をご報告頂きました。次に同じ住之江区の加賀屋地域からは連合町会の大木保宏会長から、「コミュニティが育てる地域防災力」として地域の最前線でどのような防災活動を行い、どのような課題があるのかをご報告頂きました。さらに、近年地域防災において重視されている地域の事業所との連携ということで住之江区が本社所在地の株式会社グルメ杵屋から加藤誠久総務部門長が「企業が高める地域防災力」として、企業と地域が連携した防災や福祉避難所に関するご報告がありました。最後にパネルディスカッションとして、コミュニティの持つ力を行政や企業との協働でさらに高め、来るべき災害に備えるためにどのような取り組みが必要なのか、活発な議論が持たれました。

5月10日 いのちラボを作る

大阪市立大学都市防災研究プロジェクト(ODRP)で開発している、コミュニティ防災拠点「いのちラボ」の製作に参加しました。住吉区の大空小学校の敷地内で、入手の容易な単管パイプを組み合わせ、ドームを製作しました。製作は地域の住民の方と一緒に行いました。いのちラボは、平常時はいのちの大切さ、防災を学ぶ場所として使われ、災害時には地域の防災拠点となる予定です。

6月7日 まち歩き(住吉区)

h26-gatsun2-17住吉大社周辺での防災まち歩きに参加しました。住吉大社の歴史、地形、河川、石碑、旧街道などの解説を聞きながら、地域の方、中学生、警察や消防の方と一緒にまち歩きを楽しみました。とくに、上町断層による隆起を実際に確認することができ、都市の地下に断層が存在している事を再確認できました。このまち歩きではタブレット端末とアプリを使い、端末で写真を撮って、オリジナルのデジタルマップ(右)も作成しました。

※デジタルマップの閲覧にはGoogle Earthプラグインのダウンロードが必要です。右画像やリンクをクリックするとダウンロード画面が表示されます(ダウンロードされていない場合)。

6月21日 災害時の対応能力

災害リスクや防災を学んでも、いざという時に実際に動けるかはわかりません。そこで、実際に避難する事を想定して、体力測定、避難実験を行いました。体力測定では日頃の運動不足を実感し、普段から体をもっと動かそうと思いました。避難実験では、心拍数などを測定し、科学的に避難に必要な体力を検証しました。リアカーや車いすを使った、災害時要援護者の避難支援も体験しました。

7月12日 小学校での出前授業

西成区の玉出小学校での土曜授業で防災の出前授業を行いました。液状化実験、逆断層地震実験、防災カルタなどを行いました。初めての経験で緊張しましたが、子ども達は興味を持って、元気よく授業を聞いてくれました。この授業をきっかけに子ども達が少しでも防災に興味を持ってくれれば良いと思います。

7月19日 避難所の環境改善

避難所開設運営をゲームで学びました。初めに、大阪市立大学内の避難所である体育館、防災井戸、備蓄倉庫などを見学しました。次に、体育館の図面を広げ、避難所を開設するときに必要な物や場所を考えました。多様な属性の避難者を受入れ、体育館内に避難してもらう場所を配置しました。避難所で発生する様々なトラブルに対して、対応策を議論しました。

7月26日 成果報告会【チラシ】

h26-gatsun2-16地域住民の方のコミュニティ防災教室報告会と共同で、報告会を行いました。発表スライド(右)を用いて、今まで取り組んだ内容、デジタル防災マップ(上)、防災力自己診断結果、避難所の提案などを行いました。地域の方からは要援護者の支援に関する質問などがありました。

担当教員が授業を振り返って

h26-gatsun2-15東日本大震災の記憶もまだ新しく、南海トラフ巨大地震の発生が懸念されるなかで、本演習の受講生は都市大阪における防災課題を積極的に理解しようとする姿勢でした。本学では東日本大震災直後から全学的に都市防災研究に取り組んでおり、とくに地域との連携、地域への研究成果の還元を重視しています。従って、地元の大阪市住之江区、住吉区、西成区の行政機関、住民と協働した演習となりました。区役所、消防、警察の職員と大学教員の解説を聞きながらのまち歩きでは、普段は気づかない、地形、危険箇所、防災施設等を発見し、電子地図に記録しました。演習の後半では、防災教育の講師にもチャレンジしてもらいました。自らが学んだ内容を子どもたちにわかりやすく伝えることに苦心しつつも、楽しみながらの学べる工夫を入れて、活気のある授業になりました。自らが教えたことで、もしかしたら子どもたちのいのちを守ることが出来るかもしれないと気づくと、一層熱が入ったようです。最終の報告会も地域住民と共同で開催し、手厳しい質問にも、的確な回答をし、住民の皆さんも感心されていました。今後は、アゴラセミナーで東北の被災地なども訪れ、自ら課題を発見し、解決策を建てる能力を身につけてくれると期待しています。

【担当教員】
大阪市立大学大学院 生活科学研究科 生田 英輔/生活科学研究科 森 一彦/工学研究科 重松 孝昌/都市健康・スポーツ研究センター 渡辺 一志/理学研究科 三田村 宗樹/文学研究科 佐伯 大輔